来 歴


ことばの波


おびただしいことばの波の中から
はなやかな仮想を
一枚また一枚はがして行くと
もう波以外には何もみえなくなる
荒涼たる遠景の次に
清潔なしぶきがひとしきり
あきずに海を噛んでいるあたりから
まぎれもなく私は一羽の鳥だった

見え隠れしながら
引いて行ったあれは
私のことばなのだろうか
とすればあまりにさびしい湖の色だ
死んだ魚のうろこのように
白っぽい裏側を光らせているもの
岩角にひっかかっている
海草のきれっぱしのようなもの

もうこれしか行けない
ところまで飛び続けて
ついにことばの向こう側
不在の沖へ出てきてしまった
内部へ向かってだけ
大きな輪をえがく私の胸に
見知らぬ海が
はやひたひたと満ちはじめている

失ったことばならば
波かきわけて探さねばならぬ
透明な前方に見えてくるのは
決して終わらない私の海だ
私の胸からあふれ出た海が
くりかえしている巨大な図形だ
潮にまみれた私の羽が
とめどなくたたき続けることばの波だ

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